3都市⑦ バンコク郊外その2 |
8月31日、パトムタニ県ナワナコン工業団地に立地する日系部品メーカーを訪ねた。バンコク市内から46km、ドンムアン空港から20km。1号線沿いに高速道路を北上。左手にイタルタイ社が建設中の南北方向の高架高速鉄道が並行する。停車駅が数か所完成している様子(写真)。高速道路を降りた地点からランシット地区郊外に、バンコク大学(私立?)、タマサート大学ランシット・キャンパス、アジア工科大学と左手に過ぎる。
ナワナコン工業団地は1971年開設でタイでは最古の工業団地。入居企業約200社中、約半数が日系。主要企業はトステム(アルミ製品)、ローム(コンデンサーなど半導体)、セイコー(HDD部品、時計部品)、パナソニック(熱交換機)、フジクラ(電線)、トミー(玩具)など。団地を入ったところにあるロームの敷地が団地で最大か。
訪問した企業の開設は1999年。従業員数は約2500人で、日本人は23人。タイ人管理職は40人弱。
主な製造品は光学カメラ部品、車載用プレス部品、センサーカメラなど。インスタントカメラと車載センサー(主に日本市場向け)の2製品が売り上げの6割を稼いでいるという。販売先は在タイ日系完成品メーカーへ直接納入か、日本の本社を通じて海外の日本企業へ間接的に納入。部材調達はタイ国内4割(射出成型用プラスチックなど)、中国からの輸入4割(汎用部材)、日本からの輸入2割(プレス金型など)といったところ。輸入部材はスワナプーム空港に着き、工場までトラックで運ぶ。スワナプーム空港から工場までは1時間半程度。部材の種類が関税番号分類で約3000品目あり、それらを加工・組立後、製品は約100品目。生産機械の一部やプラスチック成型用金型は自社生産しているという。
機械産業は生産品目ごとにフラグメンテーションの度合い(生産工程分業)が異なるため、全体像をつかむのは難しいと感じた。
一般ワーカーの賃金は現在の最低賃金に沿って300バーツ/日×30日=9000バーツ/月プラス福利厚生分。20年前は最低賃金が160バーツ/月程度だったか。離職率は0.8%と低い。半面、細かい作業を必要とする工程では20歳代が理想だが、現在のワーカーの平均年齢が33歳程度となり、基本給が右肩上がりなので労働コストがかさむというデメリットがあるという。
2011年10月の大洪水では敷地内の2.4mの高さまで浸水し、大打撃を受けた記録を工場玄関の柱に刻んでいる(写真)。一部生産設備を別に避難させ、製造を何とか継続したという。バンコク北部近郊で被害を受けたすべての日系工場も同様の状況であったと思われる。浸水はドンムアン空港の南まで達し、滑走路では機体のボディの高さまで浸水したという。