東部回廊ほか見て歩記26: 再び昆明 |
5月2日、朝6時ごろ夜行列車の照明がついて、3段ベッドの最上段にいる筆者はまともに明かりが顔に当たって起こされる。熟睡とはいかないまでも、ある程度疲れをとるくらいは眠れた。明るくなってきて気付いたが、窓から電線がずっと見えるので、電化されている。標高1600m近くの昆明までよく電化したものだ。トンネルも多数くぐったように思う。
列車は昆明駅に7:54に到着。駅前は乗客とそれを待ち受けるいろんな商売の人たちで混雑している(写真)。(2014年3月にこの駅で青天の霹靂のようなテロ事件が起こったが、10か月前のこのときはそんなことはまるで想像できなかった。)タクシー乗り場も客待ちのタクシーも見当たらないので、涼しい(肌寒いくらい)し、運動を兼ねて君楽酒店まで歩くを覚悟で、駅から北京路をまっすぐ北へ歩く。地下鉄工事のある交差点は面倒だが、交通規制で車の流れが少ないところは車道を歩いても大丈夫だ。市内の地理はだいたい頭に入っているのでひたすら歩く。
北京路を北へ2kmほど歩いて金碧路を左折し、西へ1.5kmほど歩く。金碧路では朝の体操をする老人グループを見かける。三市街を右折して北へ300mほど行くと、東風西路と交差するロータリーに出て、そこから東風西路を北西へ1.5kmほど歩き、歩道橋を過ぎたところで右折して北へ向かうと、400mほどで君楽酒店に到着。約5km強を、1時間少しかかった。さすがにいい運動になり、肌寒い気温にもかかわらず、荷物を引きずって、水たまりは担ぎ上げなければならなかったこともあり、たくさん汗をかいた。(中略)
5月4日午後、翠湖の北東側を散策した。円通街を東へ500mほど歩くと、円通禅寺がある。天気が良い土曜日とあって参拝客が多い。境内は門から下り坂になっている。熱心にお祈りをしている人たちが多い。
円通禅寺を出て東へ歩くと、青年路に出る手前で左手に昆明動物園がある。1カ月前に見た郊外の野生動物園と比べると、狭く、動物の種類が少ない。それでも立地がよいからか、家族連れで賑わっていた。動物園の西口を出て、鼓楼路を東へ歩くと、北京路に突き当たるまでの数百メートルが、左右に、看板、広告、電光掲示板などを扱う看板店街であった。
その看板店街の角から北京路を北へ500mほどあるくと、北京北駅兼鉄路博物館がある。『歩き方』によると、フランスが20世紀初頭に中国南部からベトナムにかけて狭軌のレール幅で敷設された路線で、2002年ころまでは昆明北駅~河口間に客車を運行していたが、現在では廃線となり、昆明北駅を博物館にしたという。しかし、北京北駅の駅舎が工事中のため使用中止となっていたためか、鉄路博物館も閉館していた。散歩が徒労に終わった。
仕方なく、北京路を南へ戻る。円通街との交差点で右折して西へ歩くと、円通大橋の手前に、多くの人が出入りする小[口乞]屋の並びがある。その1つの店で写真メニューのなかから「重慶四川麻辣鮮香」という、唐辛子たっぷりのモツ入り米粉を注文。7元。やはり地元の軽食屋は安い。スープは辛すぎて飲めない。そのスープが一瞬目に入ってかなりしみた。しかし、うまかった。円通大橋のたもとには公園や小さな市場、古そうなレンガ造りの家屋の商店街などがあり、なかなか味がある。(中略)
この日は5~6kmほど歩き、移動式交番を何か所かで見た。1人用の球体型のものと2人用の蒲鉾型のものを見た(写真)。ボックスの底にコロがついていて、市内の治安状況の変化に応じて移動させるのだろう。これらは中国のオリジナルかもしれない。
5月5日午後、今度は昆明市街の南西方向へ散策。東風西路を南東へ約800m歩くと、五一路との交差点があり、その角に雲南博物館がある。1階は特別展示で、フランス人写真家が1950~70年代に世界を旅して撮った白黒写真の展示があった。2階は雲南史上最古とされる滇国時代(BC339-221)、その後のQing(金?)国時代(BC221-206)およびHan([さんずいに又]国時代(BC206-AD220)につくられた青銅製の祭祀用品が展示されている。雲南省各地での出土時期次期は1955~1999年。なかでも有名なのは牛虎銅案とよばれる青銅のテーブルで、親牛が体の下に子牛を隠して虎からの攻撃を防ぐというデザイン。この像は、建水へ行く途中の江川という街のロータリーでも見た。2階の入り口には、漢の皇帝から下賜された金印も展示されている。3階は伝統工芸品や民族衣装の展示。建水の紫陶、景洪傣族の土器や影絵、藏(チベット)族の面具や仏画、納西(ナシ)族の宗教行事用楽器、壮(チワン)族の漁鼓、苗(ミャオ)族の刺繍など。
博物館の後、五一路を南西へ400mほど歩くと、国防路との三叉路に出る。国防路を南へ200mほど歩くと金碧路に突き当たる。国防路の途中には「国防劇院」と書いた軍施設がある。国防路の突き当りは、人民解放軍の大きな施設で、ゲートに若い兵士が複数立っていた。このように散歩していると、頻繁に軍施設を見かける。前日も北京路沿いに「人民解放軍雲南軍区」や「空軍招待所」のゲートを見た。
金碧路を西へ少し歩くと、たくさん小[口乞]屋が並んでいるところに通りかかり、13時半、その並びの1つに入った。他の客が食べていたものを指して注文。メニューをよく見たら、「羊肉炒飯」11元だった。店内に新疆風味羊肉の串焼きを売っていたし、ウェイターが回教帽を、ウェイトレスが頭巾をしていたので、明らかに新疆ウイグル自治区出身者の店だ。ただ空腹でよく見ずに入ったのだが、図らずも雲南省の多民族文化に触れられた。
食後、金碧路から西華北路、大観路と3kmほど歩き、大観公園に到着。この公園は滇池の北東岸にある。入園料は20元。入り口から入ると、大観河沿いに花壇がきれいに設置したり、湖ではボート遊び、さらにその奥には遊園地があり、家族連れ、友人同士、カップルなど市民で賑わっている(写真)。湖には船着き場があり、そこから50元で滇池を周遊できるが、90分かかるというのでやめた。
15時半ごろ、大観公園を出て、大観路をひたすら4kmほど歩けば、だいたいホテルに戻れる。大観河沿いの遊歩道では市民がトランプ(真剣なので賭けているのだと思う)、釣り、デートなどを楽しんでいる姿が見られる。大観路と西昌路の角が、ちょうど1カ月前にも通りかかった公園で、そこが老人の溜まり場となっていて、すごい人混みだった。トランプ、三線演奏、フォークダンス、将棋、それぞれの楽しみ方をしている。中国の近未来の超高齢化社会を見ているような感じがした。
大観路の突き当りが、大観商業城という商店街、KFCなどのファーストフードや、筆者がワイン購入で何回もお世話になったウォルマートが入っている。この日は全部で10kmほど歩いたか。(後略)