東部回廊ほか見て歩記9: ラオカイからサパへ往復 |
ベトナム最初の1泊はラオカイではなく、そこから南西に40kmほどの山の中にある、昔フランス人が避暑地として開発したサパという町へ行く。ラオカイ駅前から出ている乗合ミニバスを利用する。16時半発のバンを待って、ラオカイ駅で暇をつぶしていると、夕方、ハノイからの列車が到着して出口から人があふれ出てくる(写真)。筆者の乗るミニバスの運転手、車掌、旅行社スタッフ計4人くらいが出口で客の争奪戦に参加する。この10分ほどのタイミングが輸送サービス業者やら物売りの人たちの勝負の時間帯だ。首尾よくミニバスの席はほぼ満席になり出発。
サパまでの道のりはほとんどカーブの多い山道で、途中から霧と小雨に変わり、視界が真っ白になり運転は危険そう。道中、棚田が多いので、晴れていたら素晴らしい写真が撮れただろうと思う。約1時間後、サパの中心部に到着。降りると、とても寒く、吐く息が白い。サパは海抜1560mと高く、しかも雨が降っているので気温が急下降したのだろう。『歩き方』で目星をつけていたThien Ngan Hotel(1泊40万ドン=約20ドル)に投宿。部屋は質素だが清潔そう。パスポートはフロントに預けたままで、チェックアウト時に返却だという。(ベトナムの宿泊施設はこのパターンが多い。)
サパは清里的な小さな町で、メインストリートはおしゃれな欧風のレストランやバー、マッサージ店が並ぶ。Roman’s Pizzaというイタリア料理レストランを見つけて入る。店内は暖炉があり、テーブルには蝋燭が灯っていて暖かい。オーナーらしき女性は英語ができて日本人客にも慣れている様子で「ありがとう」としゃべった。ダラット赤ワイン2杯、野菜サラダ、スパゲティ・ペペロンチーノを注文して合計約20万ドン(約10ドル)だった。シーズンオフに加えて雨のせいか、20ほどテーブルがあるのに客は筆者1人だけだった。そのあと、ゲストハウス近くのBebop Barに入ると、ビリヤードをしているフランス人カップルが1組とベトナム人カップル(客ではなさそう)がいただけ。カウンターでシーバスリーガル(5ドルと高い)のショットを飲んで温まった。部屋のシャワーはありがたいことに熱いお湯が出た。水だけだったら凍えていたことだろう。中国での宿泊施設は部屋のテレビが中央政府のCCTVと全国各省の「衛視」(衛星放送局)配信の放送だけで英語プログラムは皆無に近いが、ひとたび国境を超えると、テレビ放送のラインアップは英語放送のほうが充実している。報道、映画、スポーツなど東南アジア一般のホテルでみられるラインアップがある。
翌日の朝は雨が降っていて、みじめに過ごす。11時ごろ、霧がかかっているが、雨があがったようなので外出。サパ市場を歩く。行商人やマーケット内の衣料店はこの地域に多いモン族(中国の苗(ミャオ)族とつながる)の人たちで民族衣装を着ている(写真)。そうしたエキゾチックな雰囲気とフランス的町並みに魅かれるのか、ここは欧米系観光客が多い。冬の服装を持参していなかったので、サパはとても寒くて凍えそうだった。
その午後にミニバスでサパからラオカイへ「下りる」と、気温が数度上がったようで助かった。それでもこの時期のベトナム北部は肌寒いくらい。ラオカイ駅前のThien HaiHotel(1泊60万ドン=30ドル)に泊まり、近くのバス会社オフィスで翌日のハノイ行き長距離バスのチケットを購入(25万ドン=12.5ドル)。
カジノ施設の場所を確認したいので、駅前に詰めていたタクシーに「Take me to Casino」と頼んだら、5万ドンという。おそらくふっかけているのだろうが、近い距離には間違いなさそうだ。言い値でOKし、着いてみたら国境ゲートからせいぜい1kmの、紅河の対岸にあるLao Cai International Hotel(老街国際酒店)だった。玄関を入ってすぐの吹き抜けの2階にバカラ・テーブルが約20卓あり、その半分ほどが中国人客で埋まっていた。今日は木曜日だが、週末なら満席になるのかもしれない。カジノ施設内では写真撮影は禁止だ。
次に国境橋(写真)を通過する貨物の中身をチェックするために、貨物の積み替え場に行った。中国側から運び込まれる「神輿」状のリヤカー群の荷物はそこでトラックに積み替えられ、逆にベトナム側から運ばれるトラックの荷物はリヤカーに積み替えられていた。面倒な作業だが、これで「互市貿易」の免税メリットを享受できるのだろう。中国からの積荷を近くで見ると、幼児用のプラスチック製歩行器やベビーカーなどだった。積み荷の写真を撮りまくっていたら、不審者に見えたのか、作業員の誰かが通報したのであろう、どこからか警官が現れて、筆者のカメラを指さす。英語で弁解し(どれだけ通じたかはわからない)、写真を彼が見えるように1枚ずつ「Deleted」と言いながら削除して見せたら、納得してにっこり笑った。その後、他のベトナム国境でも同じような経験をした。回った諸国のなかでベトナムの国境が写真撮影に最もうるさかった。