バガン |
3月18日、朝6時半、エアー・バガンの小型機でバガンへ飛んだ。ニャウンウー空港に着陸し、機体後部のタラップから降り、そのままこじんまりしたターミナルまで歩く(写真)。
空港のあるニャウンウーの町がこの地域の商業の中心地で、そこから南西5kmに考古学保護区に指定されたオールドバガン、そこからさらに南に4kmほどに考古学保護区から強制的に移住させられた住民が転居してできたというニューバガンがある。空港から宿泊ホテルのあるニューバガンまでタクシーを拾い、その途中にあるバガン・ヴューイング・タワーというのに立ち寄ってもらった。地元のビジネスマンが観光案内所として建てたもののようだが、観光客が集中するオールドバガンから東へ5~6km離れており、客はほとんど見かけなかった。それでもタワー屋上の展望所からは広大な乾燥気候のバガンに無数に点在する寺院や仏塔が眺められ、幻想的な雰囲気だ(写真)。
ニューバガンのホテル(MyanmarTreasury Resort Hotel 、1泊60ドル)に着くと、タクシーの運転手が午後のガイドツアーをオファーしてきた。暑い中、見どころが散らばっているバガンでの足は確かに必要だと思い、空港からの送迎も含め、1日3万チャット(当時のレートで約38ドル)で手を打った。ホテルは4つ星でなかなか快適だった。バガンまでの旅程は随分贅沢をした。2日後にマンダレーへ移動するつもりだったので、ホテルのフロントに相談し、エーヤワディ(イラワジ)川をマンダレーまで遡る外国人用フェリーを35ドルで予約してもらった。
チェックイン後、まずはランチを食べにニャウンウーの町へ行く(約10km)。町の中心地で停めてもらい、外国人でも入れそうなレストランを探す。観光地で売っている町だけあり、数件それらしき店を見つけ、Shwe Moeというレストランに入った。ここでイラワジ川から揚がってきたと思われる川エビのカレー、オムレツ、サラダ、ごはん(長粒米)、マンダレー・ビール大瓶を注文して5000チャット(約6ドル)ほどだったか。食べすぎた。ニャウンウーの町には観光用の馬車(もしくはロバ車)がたくさん停車しているが、のんびりとした雰囲気で筆者が通り過ぎてもドライバーたちは必死でつかまえようとはしない(写真)。食後しばらく町を散策したが、観光町ということもあるのだろうが、伝統と近代が交錯しているような印象だった。スマホを操る若者の姿も見かけた(写真)。
さて、肝心の寺院・仏塔見学なのだが、12km2の範囲に、11~14世紀に建てられ修復を繰り返してきた2834もの建造物が散らばっているらしく、『地球の歩き方』に写真つきで紹介されている「必見」のものだけでも30近くある。建造物には仏塔(内部空間のないゼティまたはパヤー)、寺院建築(内部空間をもち仏像を安置したり壁画を描いたりしているグーまたはパーヤチャウン)、僧院(僧侶が生活するポンジーチャウン)の3種類があるという。この分野に真剣に興味がある訪問者なら少なくとも数週間は滞在しないと満足できないのではないだろうか。筆者の場合はバガン初訪問でもあり、雰囲気だけ味わえればよく、暑さもありまったく無理はしなかった。この日は1時間半ほどでニャウンウーに近いShwezigon Zediとオールドバガンへ向かう途中にあるHtilominlo Temple(Hは発音しない)の2か所を見るのが精一杯だった。観光地の寺院境内には必ず押し付けガイドや土産物売りがたむろしていて、とくに子供たちを含む若者が小銭稼ぎに熱心なようだ(写真)。ただし、ミャンマーはまだそれほど「観光ずれ」しておらず「ぼったくり」はほとんどないようので、こうした人々にあまり抵抗しなくても、適当にコミュニケーションを楽しむことができる。その日の夕食は運転手に案内してもらったエーヤワディー川を見下ろす庭がある野外レストランで、川魚料理、ごはん、ミャンマー・ビール大瓶を注文し、やはり5000チャットほどだったか。ミャンマー随一の観光地のわりには(今のところは)物価が安くてありがたかった。
翌3月19日は、ホテルで馬車を呼んでもらい、オールドバガンを終日回った。料金は2万チャット(25ドル)と、現地価格としては高いのだと思うが、滅多にできない贅沢だ。この日は合計の移動距離が20kmほどになったと思うが、この距離をエンジン動力に頼らず、生きものの力だけで移動したのは初めてだった。自動車ならガソリンタンクと排気口が必要だが、馬の場合は頭部の下に干し草をためるエサ受けと、お尻の下にウンコ受けを装備している。シッコは随時垂れ流しだ。途中でパンクのタイヤ交換ならぬ馬蹄交換もあった(写真)。自動車ならハンドルやエンジン・ブレーキをいくら酷使しても文句を言わずに走り続けるが、馬の場合は息の粗さや暑さに喘ぐ様子をみながら適宜休憩を入れなればならない。タクシー運転手のほうが商売としては圧倒的に楽だと思うが、馬車ドライバーは自分なりに愛馬との信頼関係を築いていくというのが醍醐味なのだろうと想像する。
ニューバガンのエーヤワディー河畔に建つLawkananda Phaya→オールドバガン手前2kmほどにあるNagayon Temple, Apeyadana Temple, Manuha Temple→オールドバガン城壁内にあるGawdawpalin Temple, Thatbyinnyu Temple, AnandaTemple, Mahabohi Phaya, Bu Phaya→城壁の外東側1~1.5kmにあるDhammayangyi Temple、そして最後はSulamani Templeといったところを見て回った。しかし、暑さで朦朧としていたため、寺院の名前と証拠写真が正確に一致しているのか、自信がない。最後のスラマニ寺院の一番上に登って見下ろした風景は格別だった(写真)。そこからは運転手が気遣ってくれ、午前に通った舗装道路ではなく、内陸の荒野を突っ切る土の道を通ってホテルへ戻った。ときどき子供の押し付けガイドや土産物売りの「攻撃」に遭ったが、ほとんど気にならない程度の圧力であった(写真)。