シンガポール2:コーズウェイで対岸のマレーシア・ジョホールバルへ |
朝早いので部屋の用意ができておらず、一息ついて汗が引いた10時ごろ、荷物をクロークに預け、出かける。先ほど歩いた道を折り返し、チャイナタウン駅を目指す。駅に近い団地の1階の小さいフードコートで一息。チャーシュー万頭2個(価格は失念)で腹ごしらえ。 団地の一階にはいろんな商店、スーパーなど生活に関わる商業施設が入っているほか、公営と思われるSingapore Poolsというサッカー賭博場まである。地元のリーグよりもヨーロッパリーグの試合を賭博の対象にしているようだ。電光掲示モニターでは詳細な試合スケジュールと結果を表示している。
メコン地域研究を通じて国境マニアに変身した筆者としては、今回はシンガポールとマレーシアをつなぐ2本の橋を渡りたい。32年前の最初の訪問でジョホールバルへ渡ったのだが、記憶が曖昧だ。コーズウェイへの中間辺り(ブキティマ通り沿い?)にあったAdmiralty Houseという名前のコロニアル風なホテルに泊まったことは覚えている。しかし、現在では島の西側にセカンドリンクという2つ目の国境橋があることも認識していなかったので、まさに浦島太郎並みに新鮮な気持ちだ。調べると、コーズウェイが1928年、セカンドリンクが1998年の開通だというから、 2本目の建設までに年月を要したものだ。コーズウェイ上では毎日渋滞が激しいため、コーズウェイのルートに通勤用の都市鉄道を、セカンドリンクのルートにクアラルンプール行きの高速鉄道を建設するというのが、つい3日前の新聞報道だ。
Chinatown駅から東北線(紫色)で2つ目のDhoby Ghaut駅で南北線(赤色)に乗り換えて北へ向かう。ここの乗り換えも結構歩かされた。南北線に乗り換えて16駅で、コーズウェイへ最短距離の越境路線バスが出ているKranji駅だが、そこまで40分ほどかかる。7駅目のBishan駅から地上に出る。郊外に出るとこの方角も画一的なデザインの高層団地が連なる(写真)。狭い島に500万人超の人が住むには高層化しかないだろう。
Kranji駅の北出口に「170X」の表示のあるバス停に長い列ができている。これがウッドランズ・チェックポイント経由のジョホールバル・セントラル(JB Central)鉄道駅行きの越境バスだ。チェックポイントを始発として列車も1日10本出ているようだが、クアラルンプール以北へマレー鉄道を利用するのでなければ、越境のためだけに利用するメリットはない。
10分ほど待っていると越境バスが到着。乗車口で EZ-Linkチケットをフラッシュする。バスはとても混んでいて通路で立ったまま、15分ぐらいでチェックポイントに到着。全員、電子カードをフラッシュして「支払い一時中断扱いpayment suspension」の扱いのまま、イミグレビルへ向かう。ヒトの流れはとは別に、貨物トラックのレーンは東側に別にある。旅客バスは中央の専用レーンを通っていけるが、トラックはそちらへ迂回するレーンがあり、すごい渋滞。3年前、タイ・マレーシア国境で見た物流よりもこちらのほうが混雑している印象だ。
さて出国検査をスムーズに終え、ビルを出たところに再びバス停があり、ここも長い列になっている。平日の12時ごろだというのに混んでいる。モノもヒトも毎日こうして大量に国境橋を往来してるようだ。
筆者はゆっくり国境を見たいし、バス乗客の待ち列を見ると歩いたほうが速そうなので、コーズウェイ橋を歩く。地図では1km程度に見えるので、炎天下だが、何とかなるだろう。歩く人を見かけない中、橋のほうへ進むと国境係官の詰め所があり、「そこの階段を降りれば歩道に出られるが、車に気を付けて左端を歩くように」と若い係官にアドバイスを受ける。3階分ほどあったと思われる螺旋状の階段を最下段まで下りると、確かに歩道があり、最初の数百mはトンネル状になっていて、そのうちに道路と合流し、表に出られる。その間、マレーシア側から歩いてくる2人とすれ違ったが、その後は誰ともすれ違わなかった。
これほどの大規模な国境橋を歩いて渡るのは初めてで、ジョホール水道Johor Straitsの左右とも眺めが素晴らしい。が、暑い。橋の中間まで来ると、覚悟はしていたが、かなり汗だく。寝不足のままなのでやや不安だが、途中で引き返すわけにはいかない。シンガポール側の国境イミグレビルが5階建てのデパートほどの規模なのがわかる。マレーシア側のイミグレビルは、コーズウェイから高架道路がさらに北方向に伸びていて見えない。タイ・マレーシア国境よりここのほうがすべての造りが大規模だ。途中で列車が筆者の50m右側を追い抜いていった。相当古そうな車両だったので、オリエント・エクスプレスのクラスでないのは明らか。
1km前後の国境橋を渡り切ったところで、なんと歩道が途絶える。どこにも歩行者の逃げ道がない。シンガポールの係官はこの事実を知らないのか、注意を忘れたのか、想定外だった。マレーシア側のイミグレ施設が国境橋のたもとからJB Central駅へ引っ込んだために?歩行者のアクセスがなくなったのかもしれない。歩道が途絶えたその先は自動車道とバイク道に分かれているが、仕方なくバイク道の左端を注意しながら歩く。筆者のすぐ右をバイク連中がビュンビュン追い抜いていく。汗がさらに吹き出す。
右へカーブするバイク坂道を600mほど登り、ようやく右手(東側)に真新しそうなJB Central駅が現れる。左から順に、バイク、乗用車、トラック、バスと入国審査のレーンが分かれている。徒歩者専用のレーンはない。仕方なくバイクレーンをそのまま歩くと、その先で見張りの国境警察のお兄さんに見咎められる。ヤバさと暑さで少しパニックになるが、パスポートを見せて日本人旅行者だと説明すると、訊問室に連れて行かれそうな雰囲気はないのでほっとした。トランシーバーで上司らしき数人に連絡し、「珍客」の対応を協議してくれたみたいだ。結局、上司にいろいろ対応を指示されたそのお兄さんに「連行」され、バイクレーンからジグザグにバスレーンまで横切り、越境バスから大量に降りてくるっバス停まで連れて行ってくれた。訊問でもされるかと思っていたが、親切な対応に感謝。後で考えれば、バスが着くその地点まで、車道を自力で横切って辿りつくことができれば、お兄さんたちの手を煩わせることはなかったと思う。しかし、暑いし、車道の交通量が多いので、そういう機転がきかなかった。コーズウェイを歩いて渡ることは禁じられてはいないことは確認できたが、お勧めできないことも確認できた。一方、この混んでいる国境でバスを利用して越境しても、シンガポール市街から2時間はかかるし、同じように折り返すとすれば往復3~4時間は見ておいたほうがよさそうだ。最新報道のような都市鉄道ができるまでは、この渋滞がボトルネックになり続けるだろう。
JB Central駅のイミグレ施設は大規模で、バス移動の混雑に比べ、入国はスムーズ。入国後、セントラル駅から、コーズウェイの延長でそのまま伸びるAbudul Razak通りを屋内立体交差通路で西へ横切るとそこがジョホールバルの玄関口。シティ・スクエアというショッピングセンターがある。地上階のバス停からはマレーシア国内各地へバスが出ている(写真)。シンガポールからの車両はセントラル駅で入国審査・税関検査を受けたあと、(確認はできなかったが)らせん状の道路を降りてきて、Abdul Razak通りに出てくる構造になっているようだ。