メコン川上流域ほか20: メーサイ散策その1 |
1月22日、朝から天気がよく、大きい窓から朝日が差してきて、部屋の中は暖かい。テレビのローカル局ではここ1カ月ほど続くバンコクでのデモのニュースをやっているが、反政府派のデモ隊は「ShutdownBangkok」などという横断幕を張って、2月2日に総選挙が実行できなくしようとしているようだ。地方を移動している間はまったく影響はないが、あと1週間でバンコクへ戻る予定なので、交通機関の便への影響がやや心配だ。
8時半すぎ、1階のレストランへ朝食に下りる。外の空気はまだ冷たい。ビュッフェのメニューは中華風の魚料理と鶏肉料理があり、ご飯はしっかり食べられる。オレンジジュースはない。コーヒーはインスタントではないが、ややまずい。宿泊代に見合ったレベルの朝食か。テーブルがすべて中華風の丸テーブルで15卓ほどあり、中国人客を想定しているようだ。筆者が入るときに5~6人中国人が食べていた。欧米人はまったく見かけない。客室占有率は低そうだ。
9時半ごろ出かける。まずホテルのすぐ南側にあるHong FanPlazaという、メーサイで唯一のショッピングセンターと思われる建物の周囲を一周する。その裏側にも商店ビル街があり、中所得層向けの商業地帯と思われる(写真)。そこから1号線の西に並行する路地裏を北へ歩くと、ワット・ドーイワオWatDoi Wao(「ワオ丘に建ったお寺」という意味)へ続く東西に走る道路に出る。右手(東側)が商店街で、左手(西側)がワット・ドーイワオへつながる登り坂になっている(写真)。この寺院は前回にも登ったが、天気がいいのでもう一度登る。階段は200段ほどあり、かなり急で、登り切ったころには息が切れる。その甲斐があり、頂上の仏塔はなかなかのもの(写真)。仏塔から少し北に、やや趣味の悪いデザインのピンク色の展望台兼お祈り場所があり、サンダルを脱いで上がると、サイ川の向こうにミャンマー領のタチレイの町が一望でき、右手には、混雑した低層の建物に囲まれた、第1メーサイ友好橋が見える(写真)。
寺院から降りる途中、ミャンマー人の参拝者とすれ違う。丘の頂上に寺院を建てるのはタイよりもミャンマーの人達の特徴のようだから、ワット・ドーイワオはメーサイにおけるミャンマー移民たちの心の拠り所なのかもしれない。階段を下りたところで、珍しく白人集団とすれ違った。ここで宿泊するかどうかは別にして、欧米人観光客もかなりの数がメーサイへ足を運んでいるようだ。のちほど第1メーサイ友好橋を観察したときも、彼らの盛んな国境往来が見られた。
商店街のアーケードに入り、しばらくして北側へ左折すると「中国街Chinese Town」となっている。中国街とはいいながら、店員にはインド系のミャンマー人が多い(写真)。
中国街を200mほど歩くと、アーケード商店街のSaitomjoy Roadに突き当たる。この通りを右(東)へ歩くと国境ゲートビルに突き当り、左(西)へ歩くとアーケードが途絶えてゲストハウスが並ぶ地帯に至る。西方向へサイ川から離れないように1kmほど上流方向へ歩くと、公安のチェックポイントがあり(写真)、そのすぐ先が小さい公園になっていて、ここにも「TheNorthern Most Point of Thailand」(タイの最北端)と刻んだ看板がある(写真)。こちらはPointが抜けておらず、正しい英語表記だ。
その看板の裏が、小川のように流れるサイ川で、対岸のミャンマー領が目と鼻の先だ。対岸で洗濯しているミャンマーのおばさんが見える。声を掛けたら返事が返ってきそうな距離だ。水位は非常に低く、川底の石が顔を出している(写真)。
この公園にもゲストハウスはあるが、さらに奥へと狭い路地を進むと、行き止まりにMae Sai Guesthouseがある。国境ゲートから1kmほどだが、秘境の宿泊地という感じ。周りにレストランも商店もなく、ここに泊まったら夕方以降はものすごく寂しそうだ。行き止まりから引き返し、公園のほとりのゲストハウスのゲートが開いていたので失礼して侵入し、サイ川のすぐそばのテラスまで降りると、そこに水位計(といっても1本の角材)があり、9フィート(2.7m)まで目盛があるが、現在の水位は2フィート(60cm)を指している。
まだ乾季はつづくので、3月ごろにはこのあたりで川底が見えるのではないか。しばらくこの「秘境」付近でウロウロしていると、すぐ鼻の先の対岸のミャンマー人が数人、タイヤチューブを4個浮き輪にした簡易筏を川に持ち出しているのを見た(写真)。釣りの準備をしているのか、密航のリハーサルをしているのかよくわからなかったが、1人が川に入っても腰までしか水がなかったので、こうした筏がなくても歩いてこちら側まで渡れそうだ。
11:40ごろ、国境ゲート近くのアーケード商店街へ戻る。ここでも雲南省産のザクロを売っている。一昨日もチェンセンで見たので、ゴールデントライアングルかチェンセンから水路で陸揚げされたものだろう。
国境橋の下をくぐり、東へ抜ける。橋の下は、水位が低いだけ、早瀬になっていて流れは結構速く見える。川沿いのゲストハウス通りを抜けると、「右折すると1号線」というサインがある分岐点に出るが、道なりに直進(東方向)し、サイ川からなるべく離れないように下流方向へ歩く。
12時前、メーサイ市域の外に出るアーチをくぐる。その後、道路はサイ川から少し離れて農道に変わる。川と道路の間には畑が広がり、トウモロコシやバナナの作付けが見られる(写真)。
市街からバイクタクシーでも雇えばよかったが、地図によれば第1メーサイ橋(昔からある歩行者と軽車両専用の小さな橋)と第2メーサイ橋(2006年にできた貨物車両専用の大きい橋)は数キロ以上離れていないはず。この日は時間制約がないので、体力制約のみが問題だ。昼ごろになり、日なたは暑いものの、日陰を探しながら歩けば大丈夫だ。湿気がないので、散歩には向いている。
しばらく農道を歩くと、行く手に柵があり、開門時間が6時から18時までという表示がある(写真)。何やら公的に入場規制されている区域に入ったようだ。その区域を1kmほど歩くと、外に出られた。すると、そこがメーサイからゴールデントライアングル方面へ北回りでつながる1041号線だった(写真)。そろそろ第2メーサイ橋の手がかりが欲しい。その近所にバイクタクシー乗り場を見つけ、数人たむろしていた運転手に、身振り手振りで聞くと何とか通じ、このまま1041号線を歩けば第2メーサイ橋があるということがわかった。バイクに乗れとは勧められなかったので、歩ける距離だと判断し、歩き続ける。(つづく)