メーソート3: ミャンマー側のミャワディ散策 |
翌12月23日、7時過ぎに1階のカフェに降りると、やはりとても寒い。なんと息が白い。表にはすでに地元の親子が朝のココアを飲みに来ている。彼らは完全に冬の格好だ。筆者はTシャツを2枚重ねと半ズボンだけで裸足。風が表から奥へ吹き抜けるので、カフェ全体に冷房がかかっているように寒い。前日と同じ、アメリカンセットとEnglishCoffeeを注文。熱いコーヒーで多少上半身は温まったが、膝から下は冷える一方。朝食後、この晩再び凍えないためにタオルケットをもう1枚借りた。
8:15ごろ、PrasatvitiRoadのマーケット入り口の角でバイクタクシーをつかまえ、国境ゲートへ向かう。気温が低いうえに風を切って走るので非常に寒い。運転手は英語ができないものの、なぜ長袖を着ていないのかとジェスチャーで筆者に聞いている。ともあれ、15分ほどで国境ゲートに着き、事前交渉の60バーツを支払う。体が冷え切った。
8時半すぎ(ミャンマー時間は30分遅れの8時すぎ)、タイを出国。第三国人専用のForeignerPassport Controlの窓口があり、スムーズに出国スタンプを押してもらう。
モエイ橋のミャンマーに向かって左側の歩道をゆっくり進む。一時パスをもったミャンマー人が僧侶も含めてタイ側へ歩いてくる。橋の上からはモエイ川を渡すボートの往来が上流も下流もよく見える(写真)。橋の中央あたりにミャンマー人の物乞い母子が常駐している(写真)。1日中こうして日銭を稼いでいるのだろうかと思ったが、のちほど14時ごろ、ミャンマーを出国して反対側に歩いたときには見かけなかったので、炎天下の時間帯にはどこか日陰に避難するのであろう。
ミャンマー側のゲートから入国する前に、橋の反対側に渡り、タイ方向に向かって左側の歩道をタイ方向へ真ん中あたりまで引き返す。その途中のミャンマー側から橋の3分の1ほどの地点に、ミャンマー側から見て「Let us allparticipate in realizing the drug free zone」、その裏にタイ側から見て「The fightagainst drug menace is a national cause」という反薬物の看板がある。さらに橋の上の中間ほどの地点に、この橋は1994年10月に起工し、1997年8月に開通したという趣旨の説明板がある。橋の下流方向(北側)は、タイ側は前日も見た屋根付きの大きなマーケットがあり、モエイ町が形成されているが、ミャンマー側は空地が多く、未開発の状態だ(写真)。
9時過ぎ(タイ時間、以下すべてタイ時間で統一)、ミャワディ側の国境ゲートから入国。タイでは左側通行で出国したが、ミャンマーでは右側通行で入国する(写真)。
こちら側も第三国人専用のPassportControlの窓口があり、その前でパスポートを取り出して待っていると、ミャンマー人係官が筆者の肩を叩き、直接オフィスに入るように促す。それもそのはず、彼らにとっては入国料の500バーツ(もしくは10米ドル)を徴収できるお客さんなので、かなり丁重に扱ってくれる。行き先を聞かれ、半日ミャワディ市内を見て回るだけだと答えると、500バーツを受け取り(領収書なし)、一時入国許可証(14日間有効のはず)の発行を省かれ、パスポートと引き換えに「MyawaddyImmigration Foreigner No.6」という整理番号6番のラミネートされたカードだけを渡される。国境から10km地点のチェックポイント(下記)を越えて、コーカレイ、パアン、さらにはモーラミャインやヤンゴン方面に向かうことになれば、出国ルートを確認したうえで、パスポートを預けなくて済むはずだと思う。
ミャンマーへ入国し、まずはモエイ川沿いの上流(南方向)のミャワディの町を見て回る。川のほとりから2ブロックほど手前には地元の伝統的な路上マーケットが展開している。そこから川のほとりの船着き場に出ると、昨日同様、今日も対岸へ渡すボートの往来が激しい。雨期よりも乾期のほうがボートの操縦がやりやすく、水面上に現われる川底への上陸も簡単なのだろう。2~3月は水位がさらに下がるだろうから、徒歩での往来が可能になりそうな印象だ。
モエイ川沿いの未舗装の通りにはたくさんバスが停車している。対岸のタイから戻ってきたミャンマー人乗客がミャワディから西方向へ発つためのバスだろう。日本製の中古バスが目立つ(写真)。
そのバス通りをしばらく南へ歩き、突き当りを東方向に歩くと、国境橋から500kmほど南の地点でモエイ川に突き当たる。その対岸が昨日タイ側で歩いた歩道が切れる地点よりも少し上流にあたる。そこからさらにモエイ川の上流へ500mほど河岸に沿って、ミャンマー人の生活道路を歩く(写真)。その数百メートルの区間に、対岸へ渡すボートの渡し場2ケ所と、本格的なボート貿易のヤード付き船着き場がある(写真)。国境橋が見えないこの地点ではボートによるヒトとモノの往来がノーチェックで自由貿易のように行われている(写真)。ミャンマー側に荷揚げされているのはLeoなどのタイ産のビールや清涼飲料水、調味料、紙おむつなどであった。対岸は30~40mほどの目と鼻の先の箇所もある。タイ側からは「滑り台」方式で段ボール詰め商品をボートに積み込んでいる(写真)。川底から土砂をバキュームで吸い込み、細かい砂を餞別して集めている作業箇所もあった。こちらは乾期ならではの生業か。
11時すぎ、国境橋のたもとまで戻り、River ViewRestaurantで早めのランチ。Sweet &Sour Chicken(3500キープ)、ライス(500キープ)、ミャンマービール大瓶(2000キープ)を注文。メニューに価格が書いてなかったが気にせず適当に注文したが、合計で6000キープ(7米ドル弱)と、ヤンゴンの物価よりも高かった。
11:40ごろ、国境橋の下流(北方向)へ歩く。前日歩いたタイ側の国境マーケットの対岸だ。こちら側はとてものんびりしていて、ヤギの放し飼いが見られる。国境取引を生業としていると思われる、簡易住居の集落がある。
12時ごろ、メインストリートに戻り、国境ゲートから離れる方向(西方向)へ1.5kmほど歩く。ミャワディの市街はタイ側対岸のモエイの町よりははるかに大きい(写真)。
12:10、立派な仏塔のある寺院の門のあたりに控えているバイクタクシー集団に、「西方向の約8km地点のチェックポイントまで往復」の相談を英語でもちかける。50バーツで話がつき、バイクの後ろに乗って出発。ところが途中でメインストリートからはずれてモエイ川上流沿いに走り始めた。10分後に着いたどこかの駐車場のようなところで、運転手は「チェックポイントだ」と言うが、明らかに違う。もう一度、ジェスチャー混じりで「ミャワディ、コーカレイ、チェックポイント」と説明すると、理解したらしく、さらに国境から離れて走るので「100バーツだ」と言う。
メインストリートに合流して西へ走る。片側1車線だが舗装状況が良好な路肩の広い道路だ。途中、右手にミャンマー軍の施設、左手に何らかの施設お開発中の敷地を見る。国境から約8km地点の「MyawaddyTrade Zone Eden Group Co. Ltd」という看板のある倉庫街でバイクタクシーを停めてもらい、そこから徒歩で10分ほど見て回るからと言って、運転手にはその看板のあたりで待ってもらった。
国境から約9km地点に「ミャワディ商業区」と書かれたゲートを通過すると(写真)、右側に「ミャワディ国境貿易区輸入検査所」、左側に「同輸出検査所」がある。ここでタイ側車両とミャンマー側車両とで貨物積替えが行わるとともに、税関・検疫・出入国管理が行われる(写真)。ここからさらに1km先にミャンマー側検問所があり、ここから先への立ち入りは以前は外国人は原則立ち入り禁止だったが、2013年9月以降はその制限は解除された。
貨物積替え所が左右に見える車両が入ってこれないスペースに、誰も制御する係官がいないので、歩いて入った。その先の検問所のゲートおよび荷物詰替え所の左右のゲートを撮影し、「これ以上は進入禁止」のサインがある地点(写真)引き返そうとしたら、右手のゲートから英語が達者な若者(係員ではなく私服のアルバイト程度と思われる)が筆者を引き留め、どこから来てどこへ向かうのかを尋ねる。モエイ橋にパスポートを預けて日帰りで観光しているだけだと答えると、「とにかくイミグレ係官と少し面談してほしい」と言われる。多少不安になったが、ミャンマー人は外国人に難癖をつけて賄賂を要求するような行動はとらないだろうと考え、抵抗せずにその若者のバイクの後ろに乗り、輸入側の物積替え場所へ到着。そこで詰めているミャンマー係官にパスポート提示を求められたので、モエイ橋に預けたままだと繰り返し答えると、「チケットは?」と聞かれたので、整理番号が入ったラミネートのカードを見せると、何やら記録しただけで、カメラ撮影については一切聞かれず、無罪放免となった。多少は緊張感ある対話があるかと思っていたが拍子抜け。ともあれ、一般観光客は立ち入ることができないであろう、荷物積み替え場を目の前で観察できたので結果オーライだった。さらに発見したのは、メーソート方面からやってきてパアン方面へ向かうと思われる国際バスがここに停車していたことだ。この国際バスを第3国人が利用できるのかどうかはわからないが、数年後に山越えの新しいルートが完成すれば、バンコクからヤンゴンまでのバックパッカーのバスルートができても不思議ではない。
13時ごろ、バイクタクシーの運転手との約束の10分程度を大幅に越えて彼と再会する。両手を頭の前で合わせ、「遅れてごめん」というつもりの意思表示をする。
そのあとはひたすらメインストリートをミャワディ市街へ引き返す。乗車した寺院の角で降ろしてもらい、約束の100バーツを支払う。そこから国境ゲートまで1.5kmほどを歩くが、前日と比べて日差しがきつく、汗ばむ。今朝、凍えそうだったのが嘘のようだ。それほど乾季の東南アジアは1日の寒暖差が激しいということだ。
13時半すぎ、国境橋のミャンマー側入国用イミグレ事務所の外国人専用窓口で、「整理券」を提示し、パスポートを回収する。今日付のミャンマー入国および出国のスタンプを確認する。ついでに、この窓口で、カジュアルにボートで往来するミャンマー人の出入国検査について聞いてみたが、係員は複雑な英語が話せないのか、あるいは適当にはぐらかされているのか、事情はよくわからなかった。再びモエイ橋をゆっくり歩いて渡る。日差しがかなりきつく、暑い。
14時すぎ、タイ側のイミグレのForeignerPassport Controlの窓口で入国スタンプを押してもらう。陸路入国はタイ滞在期限が以前は14泊15日だったが、今は28泊29日となっている。その後、他のすべての陸路国境でも滞在期間が延びていることがわかる。(中略)
15時半ごろ、前々日入ったKrua Canadianまで歩く。かなり早いが食べながらデスクワークの時間とする。フィッシュバーガー(80バーツ)とタイ風(辛い)フレンチフライ(70バーツ)を注文。
18時を過ぎて気温が急降下したので、暖房代わりにバーカウンターで見たラム酒をダブルで追加注文(200バーツ)。筆者が退散するまでにかなりの数の欧米人客が回転していたので、前の晩のBai Fernと同様、ここも人気店のようだ。
ボートで往来するミャンマー人について、レストランで英語が話せるタイ人おばさんに聞いてみたら、彼らは近距離を往来する分にはノーチェックだが、近距離を越えて当局のチェックポイントがある地点を越える場所へ入る場合には一時パスを持って国際橋を渡っているはずだとのこと。つまり、筆者が見たボート貿易は、少なくともモエイ川を挟んだヒトの往来はノーチェックで、貨物については両側のチェックポイントを迂回したり、両国の当局係官と何らかのアレンジができたりすれば非公式貿易になるのだと思う。