雲南省国境地帯5: 孟連から瀾滄経由で景洪へ |
11月15日、7:20ごろ目が覚める。再び換気のために窓を開けたままにしたが、比較的よく眠れた。外はちょうど明るくなってきたところ。そろそろ人々が活動を始めている。身支度を済ませ、7:40ごろ全通賓館をチェックアウト。デポジットの200元とパスポートを回収。
荷物を引きながら、前日の朝とほぼ同じルートで海関路を歩き、農村客運駅を通り過ぎそのままさらに500mほど東へ歩くと孟連客運駅。歩道が臭いと思ったら、ここも鳩の糞がこびりついているせいだ。
8時すぎにバスターミナルに到着。切符売場は比較的空いていて、「ジンホン(景洪)」と言いながら100元札を差し出す。何かひとこと聞かれたが、理解できないので「OK」と適当に応えると、9時半発景洪行きのチケットとおつり22元を返してくれた。中国語版Lonely Planetの情報では、孟連から景洪行きバスは8時半を始発として1時間ごとに4本出ているとあったので、始発を目指したのだが、ひょっとしたら始発はもう満席になっていて、窓口では第2便でいいかと聞かれたのかもしれない。
バスターミナルのすぐにとなりに軽食屋があり、時間待ちの人達がたくさん歩道に置かれたテーブルで麺を食べているので、筆者もここで朝食にする。奥のテーブルが空いていたので、荷物をそこに置き、前日の勐阿国境で麺を食べたのと同じ要領で、ジェスチャーで注文した。かなり混んでいたので、自分の順番がわからないままテーブルに座って待っていたら、給仕のおばさんが何か言っている。他の男性客も何か言っている。さっぱりわからないので立ち尽くすばかり。果てには彼らから苦笑が漏れるので、こっちは汗が出てきた。男性客の1人が、屋外に調味料・香辛料のテーブルがあり、お好みの調味料をそこで入れろというジェスチャー。そこでようやく筆者のどんぶりがそこにすでに出ているということに気付いた。おばさんは客が来た順番通りにどんぶりを調味料テーブルに置いて、「もうここに麺が出てるよ」と筆者に知らせていたのだ。ちょっとした注意力不足だった。ともあれ、麺の種類の選択肢はなく、米粉麺だった。辛子調味料が4種類ほどあり、適当に豆板醤色のものを入れて食べた。他の客はあっという間に食べていなくなり、筆者が最後から2番目になった。他の客が5元払っているのを見ていたので、1元札5枚をおばさんに渡した。
8時半ごろ、バスターミナルの待合室に戻る。9時に荷物をX線に通して、隣の搭乗待合室へ移動。中国のバスターミナルはどんな田舎に行ってもだいたい同じシステムのようで、だんだん慣れてきた。景洪行きバスはすでに到着していて、普洱から乗ったのと同じ、29人乗りの中型バスだ。1日4便でこのサイズということは、今日のルートはさほど需要がないということか。前日利用した農村客運駅の様子からは、孟連はミャンマー国境周辺のハブとして、ローカルな輸送の需要が大きいようだ。
9:20、何かアナウンスがあり、他の客が数人、目当てのバスに乗り込み始めたので筆者も続く。筆者の指定の1番席は運転手の真後ろの席だった。隣におばさんが座って来たので、荷物を自分の足元に押し込んだらなんとか入った。
9時半、定刻通り発車。乗客はわずか8人でスタート。数分後、市外に出る手前のガソリンスタンドで給油停車。ガソリンはリッター7.45元(約120円)と高い。94リットル700元分を給油した。このままだと乗客の運賃を合計してもこのガソリン代にもならない。道中、運転手があちこちで乗客を拾おうとして頑張る。運転手にはある程度空席を埋めないとまずいインセンティブが働いているに違いない。例えば、ガソリン代の何割かが自己負担で、途中乗車の運賃はポケットマネーにできるとか。高速道路を利用する長距離バスではこういう現象は見られないので、こうしたローカル路線バスは運転手の賃金体系が異なるのだろう。(中略)
10時ちょうど、左手に「孟連県中心敬老院」を見る(写真)。こんな田舎でも高齢化対策が進んでいるのか。だんだんカーブの多い山道になり、家畜に道を塞がれたりする(写真)。
10時半、突然前方の車列が詰まっていてバスは停車。運転手はエンジンを止め、まずはタバコを一服し、それから前方の様子を見に行く。乗客の何人かも降りて見に行った。足元がぬかるんでいるので筆者は降りず。15分たってようやく前方が動き出す。詰まっていた原因は、舗装が途絶えた工事中のカーブが坂道の泥道で、しかも片側通行をしているため、ダンプカーなどの重量車両が極端に慎重に走行していたためだった(写真)。筆者のバスも下り坂でときどきスリップの兆候をみせて運転手がなにかつぶやきながら進む。10分ほどかけてその難所を抜けたと思ったら、すぐ後に同じ状況の難所がある。対向車線でダンプカーが1台立ち往生している。乗用車やマイクロバスなど他の軽量車両はその横を無視してすり抜けていくが、筆者のバスは、すぐ前のダンプカー同様、下り坂のスリップが怖くて、立ち往生のダンプカーが立ち直ってすれ違っていくのを待っている。
20分後、ようやく2つ目の難所を抜ける。2日前にはこうした箇所はなかったので、この2日間のうちにまとまった雨が降って地面がぬかるんだのだろう。しばらく下り坂のカーブが続く間、バスは追い越しができず、ゆっくり進む。
11時半ごろ、今度は砕石用の大きな石をたくさん荷下ろししている作業車に行く手を阻まれる(写真)。車が通れる幅をはみ出して降ろしていったので、大きな石の幾つかを作業員が手でどけていた。15分後、ようやく瀾滄市街に到着。この日の移動距離の4分の1ほどに2時間以上かかった。現在、昆明方向から勐阿国境ゲートへ向かう道路のボトルネックは瀾滄~孟連の区間だ。
瀾滄の分岐点から国道214号線を南東方向へ進む。片側1車線だが、道幅が広く、アスファルト舗装はスムーズ(写真)。起伏はあるが、カーブはゆるやかで交通量もさほどなく、スピードが上がる。この沿線もお茶の段々畑が多い。(中略)
13時前、バナナ園地帯のど真ん中にある簡易食堂でランチ休憩(写真)。いかにも地元食といった感じだが、ここで彼らに付き合って食べて、胃腸に合わずトイレを催すとまずいので、筆者はエネルギードリンク「M-150」(5元、タイからの輸入品と思われる)だけ飲んで我慢する。
20分後に再発車。勐満の町を通過する。ここで10人ほど拾い、乗車率が9割ほどに上昇。彼らは乗り込むときに「モンハイ」と言っているので、行き先は勐海なのであろう。バスはワンマンで、運転手はこうした途中乗客の運賃を集めて回るのにも忙しい。ここから道路は再びカーブの多い山道となるが、路面はスムーズ。
14:10ごろ、勐遮の町を通過。ここで乗客数人下車。沿線の商店の看板には中国語とビルマ語の併記が目立つ。勐遮の手前から勐海までは道路が平坦で、左右には田んぼとトウモロコシ畑が交互に広がる。水牛の群れが道路を塞ぐ場面もあった。
14:45、勐海客運駅に停車。7~8人下車。ターミナルは結構大きい(写真)。郊外に建設中のコンドミニアムやショッピングビルが目立つ(写真)。孟連よりは明らかに大きな都市という印象。
勐海の郊外から交通量がかなり増える。低速のダンプカーを追い越すのに注意を要する。勐海の郊外に出たところで「公安辺防」による検問所あり。乗客のIDをチェックする。打洛国境ゲート方面からの麻薬、武器などの持ち込みを警戒しているのだろう。筆者はIDの提示を求められなかったので、全員チェックというわけではないようだ。
15:20ごろから登り坂に入る。カーブは比較的緩やか。しばらくして下り坂になる。筆者のバスはかなり安全運転のようで、前に低速のダンプカーがあると、なかなか追い越そうとしない。その間に乗用車に追い越されていく。左手に見える山々の斜面にはゴムの木が整然と植えられている(写真)。西双版納(傣族自治州)はゴムの国だ。(中略)
景洪市街から4kmの地点で西双版納空港を左手に通過(写真)。その後、景洪市街地に入る。
16:10、西双版納客運駅に到着(写真)。この日は200kmほどの行程にランチ休憩や頻繁の停車時間を除いて正味6時間ほど走ったので、平均時速は33kmhほど。高速道路を離れて地方道路だけを使うと一気に速度が落ちるということがわかった。
景洪は前年9月に1泊して多少土地勘があるので、バスターミナルから歩く。目指すのは、市街の真ん中よりやや南東に位置する雲南航空西双版納観光酒店。航空会社が経営する4つ星のホテルだ。バスターミナルから約1.5kmの距離にある。16時半ごろ、ホテルに到着(写真)。
中規模都市の4つ星ホテルにもかかわらず、フロントの若い男女は英語がほとんどできず、チェックインに苦労した。朝食付きシングルが1泊600元(約1万円)、デポジットが200元、クレジットカードが使える、というところまではわかったが、3泊を希望だと伝えると、なぜかちょっと待ってくれと言われる。英語が多少話せる女性を電話で呼び出し、電話口を通じてわかったのは、クレジットカードを使うのはいいが、一度に3泊分支払うのは困るというらしい。なぜなら、3泊せずに途中でキャンセルされると、返金する手続きがとれないらしい。だから1泊分ずつ、毎日フロントで支払ってほしいということ。何だか面倒だ話だ。ともあれ、チェックイン後、9階の912号室に入ると、驚くほど広く、モダンな内装で、カーペットは新しく、ベッドはキングサイズ、金庫もあり。まあ満足。部屋のWiFiの信号が弱いので、ロビーのソファに掛けて、3日ぶりにメール処理をする。
この日は朝8時に軽い麺を食べただけなので、腹ペコ。ホテルから歩いて数分の美美咖啡meimei caféへ食べに行く。『歩き方』によれば「景洪の人気カフェ。パスタやピザなどの西洋料理メニューもあり、地元の人の利用も多い」とのこと。
テラス席に座り、Four season’spizza(42元)とビアラオ・ダーク(15元)を注文。英語がペラペラのタイかラオス出身と思われるウェイトレスがいて、久しぶりに注文に苦労しなかった。食べ物メニューにはラープなどタイ料理もたくさんある。さすがにここは雲南省の少数民族のなかでもタイ族の本拠地だ。ラオスも国境が近いので、ビアラオが入りやすいのだろう。ピザはタイ風なのか、スパイスが利いていておいしかった。レストランは超人気のようで、筆者が入った後からどんどん外国人客も地元客も入ってきて、テラスも屋内も満席状態となった。